■9月の新型コロナウイルスの状況
これを書いている9月20日現在、全国的には第5波と呼ばれる感染流行期がやや収束に向かいつつあります。青森県でも八戸を中心に多数の陽性者が出たため、独自に公共施設や公園の閉鎖などの対策が行われました。青森県内においてはいまだ散発的にクラスターが発生しており、まだまだ感染が収まったとは言い難い状況です。
実際に診療していてもまだそこらへんにウイルスがいるような印象があります。それはあまりコロナの確率は高くないかなと思って検査した人からも、陽性者が出ているからです。こういう状況の時は検査をする敷居を下げて、発熱がなくても風邪症状のある方は積極的に検査するようにしています。
■沢田内科医院で9月までに検査した方は923人。そのうち45人が陽性。
これまで当院では発熱コールセンターや保健所、他院からの発熱患者の診察依頼を含め、今年(1月1日~9月20日)だけで923人の検査を行いました。保健所から濃厚接触者には認定されなかったけど、実際は近くにいた可能性がある方、「濃厚接触者の接触者」になって心配だという方もこられます。また、海外に行くために出国前のPCR検査の陰性証明が必要という方、職場や学校、保育園で陽性者が出たので不安だという方も検査を行っています。実際に症状がある方は医療として検査、治療を行いますし、そうでない方は自費診療という形で行っています。
今年9月までの検査で陽性だった方は45人でした。すべて鼻から綿棒を入れて調べる鼻咽頭ぬぐい液でのPCR検査です。陽性となった方は保健所に届け出を行い、保健所からの指示で大きい病院で検査をしてから宿泊療養か入院かが決まります。5月に検査件数が最多となりました。これは大きな事業所で陽性者が出て、まとまった検査が必要になったためです。夏休みの帰省やオリンピック・パラリンピックで人流が増えた影響か、7,8月も検査件数は多い傾向にありました。診療していて肌感覚として市中感染が続いているなと感じるときは、連日10件前後のPCR検査があり、そのうち1~2人が陽性となります。当院で陽性率10~20%のときは、弘前市内では10~20人の陽性者が出ています。
■新たなPCR検査機器の導入
右の小さい白い機械が今回新たに導入したもの。
職場全体など人数が多い場合は院外の検査会社に依頼していましたし、10名以内であれば院内でPCR検査をしていました。院内のPCR検査は1回に4人分検査できますが、結果がわかるまで2時間かかります。そのため多くても1日に5回(20人)くらいが限界でした。そこで先月から新たにもう1台PCR検査の機械を増やしました。この機械は1回に1人分しか検査できませんが、結果がわかるまで20分とこれまでで一番早いです。20分でわかるということは、発熱があってコロナ以外の疾患で他院に依頼するときもスムーズになります。また救急搬送する時も、陰性とわかれば救急隊やご家族の方の安心にもつながります。院内に入ってもらって採血検査やX線検査を行ったり、点滴したりするときにも職員や他の患者さんへの安全確保にもつながります。新型コロナはそうであるとわかれば、治療の面でも感染対策の面でも適切な対応の仕方というのはわかってきています。問題は感染しているのか、していないのかわからない時期です。この時期を対応しなければならない医療機関としては、患者さんのためにも医療者のためにもできるだけ早く感染の有無を判別しなくてはなりません。今後もこの2台のPCR検査機器を駆使しながら、最前線での診療にあたっていきます。
■発熱外来では基本的に聴診は行っておりません。
黄色の数字が酸素濃度。水色の数字が脈拍。
当院では発熱外来は診療時間内に(場所はわけていますが)他の診療と併行して行っています。医師は感染防護をして診療にあたっていますが、発熱患者さんとの接触は最小限にしなければなりません。新型コロナ肺炎は通常の細菌性肺炎と違って、聴診があてにならないことがわかっています。胸の音で肺炎の有無がわからないということです。もっと言えばレントゲン写真でもわからない肺炎がCTでやっとわかったりします。コロナで肺炎を起こしている方は血の中の酸素濃度が下がることが知られています。パルスオキシメーターは指に挟むだけで血の中の酸素濃度を間接的に測ることができます。前述の検査でPCR陰性とされるまでは、発熱患者さんはひとまずパルスオキシメーターで緊急性があるかどうかを確認して、その後の検査を進めています。
■沢田内科医院でのワクチン接種は9月20日までで合計14,048回
最後にワクチンの接種状況についてです。当院では西目屋村、通院中の方、茂森新町と西茂森に在住の65歳以上の方から順に予防接種をはじめました。その後年齢制限がなくなり現在は12歳以上の方で接種希望のある方すべてを対象としています。当院の接種回数は9月20日までで14,048回となりました。午後まで診療のある日は130~200回、午後休診の日も待合室で集団接種のようにして、休み返上で予防接種をすすめました。結果として9月19日の東奥日報にもありました通りワクチンの2回接種率は、西目屋村で85.3%、弘前市で58.3%と全国平均(50.9%)や青森県平均(55.4%)を上回る接種率でした。
しかし、8~9月から全国的にワクチンの配分が減っています。当院でも9~10月はワクチン入荷がかなり少なくなっており、月に3,000~4,000人に接種できる能力はあるのですが回数的には減っています。青森県では10月に青森、八戸、弘前の合計で25,000人の広域集団接種を予定しており、当院でワクチンが手に入らなくなった場合は集団接種で受けていただくことになるかもしれません。割り当て分のワクチンについては、仮予約していただいた方を中心に順次予約を入れていきたいと思います。
これからインフルエンザの予防接種もはじまりますし、冬にくると予想される第6波ができるだけ小さく収まるように自分たちにできることをしていきたいと思います。
第125号より