医療事故があった場合に、すぐ警察が来るのは間違いだ

医療事故のニュースが珍しくない時代となってしまいました。非常に初歩的なことから、医師として考えると、ここまで責任を追及されるのは酷ではないかと思われる事故までさまざまです。日本の場合、医療事故が起こると警察が来ます。そして、逮捕されたり書類送検されたりして、「刑事罰」が与えられます。場合によっては、「民事裁判」で多額の賠償金を払わなければなりません。医療だけが特別だと非難されそうですが、これは間違っていると私は思っています。医療事故で刑事責任を問われるのでは、医師や看護婦は非常に危険な職業ということになってしまいます。社会的な地位が高い、やりがいがある仕事だ、給与が高い、いろいろな理由で医療に関係する職業は人気があります。でも、医療事故で刑事責任を問われると、なり手がなくなってしまう気がします。それ以上に、診療が萎縮することを私は心配しています。つまり、医療事故を恐れるあまり、あえて危険を冒すような治療をする医師がいなくなれば、助かる人も助からなくなります。結果として、患者さんの不利益につながるのではないかと私は考えています。

医療事故が繰り返さない対策を立てることが第一

それでは、どうすればいいか? ずばり、「再教育」と「システムの変更」です。これでも繰り返す場合は、免許取り消しなどにすべきでしょう。医療事故の大部分は、事故を起こしたその看護婦だから起こすのではありません。その医師だから医療事故を起こしたのでもありません。私はそのように解釈しています。ただ、そのような事故を起こした看護婦や医師は、何らかの方法で再教育を行い、それを終了することで仕事に復帰できるようにすべきだと考えています。一番大事なことは、起こってしまった医療事故が繰り返さないようにするにはどんな対策を立てたらいいかということです。例えば、中心静脈のチューブに、胃の管へ入れるべき液体を注射するなどというのは、管が連結できないようにすれば起こらない事故なのです。全く個人の責任がないとは言いませんが、システムを改良しなければ、誰でも起こす可能性がある事故は、個人の責任にすべきではないということです。このような場合には、刑事罰を与えて終わりにするのではなく、今後も誰が行っても事故が起こらないような対策を立てるのが第一で、警察が来て捜査するのが第一ではないと言いたいのです。

医師免許をもらって25年経っても私は後悔の連続です

医療というのは、「命を預かる」といいますが、私は後悔の連続です。特に、患者さんが亡くなった時は、「もしも、私が主治医でなかったら、他の治療法をして助かっていたのかもしれない。」 あるいは、「あの時の注射は本当に正しかったのだろうか? もう少し注射の量を少なくしていれば、今頃は助かっていたのかも知れない。」などと、いつも考えてしまいます。通院している患者さんが、脳梗塞になった場合などもそうです。「もう少し、血圧を低くしておけば、脳梗塞を起こさなかったのかも・・・・。」、「コレステロールは、もっと厳しくして言って、低くしておけばこんなことにならなかったのかも・・・・」。医師免許をもらって25年経ってもこんなものです。