5月の連休は遠方から親戚の子供たちが遊びに来て、うちの子供たちも楽しい時間を過ごしました。みんなで汗だくで遊んだ後に記念撮影をして、もらったチョコを食べて、さあ解散というタイミングで異変は起きました。6歳の長男が「口の中が痛い、のどが痛い」と急に泣き出しました。以前からメロンや、ナッツでときどき口の中がヒリヒリするという訴えがあり、疑わしいものは食べないようにしていました。今回はうがいをしても、水を飲んでも症状が全然よくならず、すぐに車で野田の急患診療所へ連れて行きました。食物アレルギーを疑ったからです。
駐車場につくやいなや、車内で嘔吐しはじめました。夕食後に食べたものはほとんど出たようでした。急患診療所内に移動すると、ときどきオエオエしながらも顔面や体幹をポリポリ掻き始め、掻いたところは赤くなってきました。妻が食べたチョコの成分表を調べてメールで送ってくれました。成分表をみるとチョコにはピスタチオペーストが入っていることがわかりました。ペースト状のものがチョコに練りこまれていれば事前に気づくのは困難です。脈拍も120回/分以上ととても速くなり、小児科当番で来ていた弘大のF先生と相談し、ピスタチオによるアナフィラキシー(アレルギー反応の強いもの)と診断し、左の太ももにアドレナリンの筋肉注射、右手背に点滴をしてから救急車で小児科輪番の健生病院に救急車で行くことになりました。まだ他に小児科の患者さんが残っていたのでF先生はそのまま急患診療所に留まり、私が救急車に同乗することにしました。出発直前に抗アレルギー薬の注射も行ったため、副作用による眠気なのか、アドレナリンが効いてきて体が楽になったのか救急車収容後はウトウトしていました。健生病院では小児科当番のT先生が対応してくれました。アナフィラキシーは少し時間が経ってからぶりかえすこともあるので経過観察入院となりました。救急外来では「ママに会いたい・・」と泣きべそをかいていましたが、下の子もいるので一晩はパパの付き添いで我慢してもらいました。
息子は病室に移動するとすぐにいびきをかいて眠ってしまいました。今は昔と違って基本的に入院時に付き添いをすることはほとんどありませんが、小児の場合は付き添いが必要です。個室だったので自由度は高いのですが、ベッドと椅子が1個ずつあるだけですのでどこで寝るのか考える必要があります。連休前にギックリ腰をやっていたこともあって、床で寝て悪化させるわけにもいかないので、息子と同じベッドで寝ることにしました。6歳児とはいえ、それなりに大きくなっています。邪魔にならないように体を不自然な体勢に折り曲げながらひとつのベッドに収まりました。午前4時頃に突然「おしっこ」と言って、むくっと起き上がってトイレに行った以外は特に症状が悪化することなく朝を迎えることができました。
朝にはすっかり元気になっていて、朝食のひじきご飯を完食しました。朝回診の結果は特に問題なく1泊だけで退院許可がでました。外は退院を祝福するように雲ひとつない青空でした。窓からは弘前医療福祉大学の校舎ときれいな岩木山がみえていました。
激しいアレルギー反応であるアナフィラキシーは体にアレルギー源が入ると急速に症状が進行します。息子の場合は食べた直後から口、のどの痛みが出現、発疹や嘔吐など症状のピークは食べてからわずか30分後でした。今回のように食べ物でもおきることがありますし、医療の現場では蜂刺され、CTをとるときの造影剤注射、抗生剤点滴、予防接種等で経験することが多いです。症状の進行を止めるためにはいかに早く診断し、アドレナリンを筋肉注射できるかにかかっています。スズメバチのアナフィラキシーショックでは刺されてから30分で呼吸停止に至ることもあると言われています。そのため食物アレルギーのある子供や、ハチのアナフィラキシーショックの既往がある方はエピペンという自分で打つことができるアドレナリンの注射を携帯してもらうこともあります。息子の場合はこれから小児科でアレルギー検査を行って、今後の対応を決めていくことになります。これまでもアナフィラキシーの患者さんは何度もみてきましたが、これほど激しい食物アレルギーは初めての経験でした。改めてアレルギーの怖さを思い知りました。
第144号より