75歳以上の高齢者を対象とした医療制度が変わるようです。 基本的に医療制度が変わるというのは、医療費を少なくしても患者負担は増えるというのが通常です。 今回は、これに加えて、保険証があればどこの病院でも受診できるということが制限されるかも知れません。 このような制度がどんどん広まると、現在のように自由に医療を受けることができなくなります。

国民健康保険中央会と厚生労働省は、まるで打ち合わせたかのように12月末に相次いで同じような内容を公表しました。 多分、連携したものなのでしょう。主な内容は以下の通りです。 75歳以上の高齢者全員が地域の診療所から主治医(かかりつけ医)を選んで登録しておき、 病気になった場合の初期診療は登録した主治医だけが行う。 主治医が受け取る診療報酬は、その診療所に登録した高齢者の人数に応じた定額払い方式とする。

現在の医療制度では、患者さんは医療機関を自由に選ぶことができます。 今回の提言では、後期高齢者(75歳以上ということ)の初期診療は診療所に限定し、 病状に応じて専門医がいる病院に紹介する仕組みです。 この制度は、イギリスで行われている制度と似ています。 イギリスでは、医療費抑制政策をした結果、受診まで何日も待たなければならなくなったこと、 手術の順番待ちが何ヶ月にもなったこと、などで医療崩壊を招き、医療政策を転換しています。 他の国で失敗した医療制度をなぜ日本が導入するのか不思議です。 ただ考えられることは、制度を変更しようとする側には利益があるからだろうということです。 決して、患者さんのことを考えてのことでなないということです。

今までの歴史を見れば分かりますが、厚生労働省のやり方は決まっています。 初めは医療機関に有利なように報酬を設定し、みんなが飛びついた段階で制度を変更、 その後はどんどん医療費を下げて行くということです。 今回の提案もまさに同じではないかと思います。ハシゴをかけて二階に上げ、ハシゴをはずしてしまうのです。 最近は、ハシゴを外すだけでなく、それに火をつけてしまうのです。

最近、火をつけた例は、療養型ベッドの廃止問題です。 厚生労働省は、数年前に開業医や老人病院のベッドは介護保険でカバーする療養型に転換させました。 一般の医療費での入院よりも、介護保険での入院の方が診療報酬が高いため、多くの医療機関が療養型に転換しました。 しかし、ベッドを減らす政策を進めている厚生労働省は、療養型ベッドは廃止すると発表したのです。 今後、どのように変わって行くのか戦々兢々です。

「いつでも、誰でも、どこへでも」と言われ、医療機関へ自由に受診できる現在の制度を制限することで、 高齢者の医療費を抑制する狙いがあります。 今回の提言は75歳ですが、今までの流れから考えると、これが70歳、65歳と引き下げられ、 最終的には、すべての人たちに適用されるのは目に見えています。 自由に医療機関を選べることが制限されるような制度の変更に私は反対します。