日本板画院同人・青森県版画会同人の小田桐清一さんから版画をいただきました。 小田桐さんは長く小学校の先生を勤められ、昭和60年に退職して、現在は大鰐町に住んでいます。 学校の先生として仕事を持ちながら、昭和29年から版画を始め、数々の版画展に入賞入選され、 版画家としても活躍されました。昭和58年には、青森県芸術文化報奨、大鰐町文化賞などを受賞しています。

小田桐さんは伝統的な木版画で知られる日本板画院名誉会員の版画家佐藤米次郎さんのお弟子さんです。 佐藤米次郎さんは平成13年に亡くなられましたが、棟方志功が創立した日本板画院展を中心に、 県内の美しい四季、郷土芸能などを題材にした作品を発表した有名な版画家です。 私は何かの会合で、佐藤米次郎さんの隣の席になり、版画のお話を伺ったことがありますが、 小田桐さんと知り合う前でした。 小田桐さんは、「最近は体力がなくなり、版画を彫ることができなくなった」、と言います。 また、跡を継いでくれる人がいないことを寂しがっていました。

これまでも、岩木山の版画など数点をいただきましたが、今回は、 日本板画院展に出品した『鳳凰(昭和57年制作)』と、弘前市新町の『誓願寺山門(昭和61年制作)』の 2つのすばらしい作品をいただきました。 ともに、55×40cmと大きな版画です。外来待合室に展示していますので、ご覧下さい。 なお、弘前市城東のトンカツ専門店「喜多八」には、とんでもなく大きな小田桐さん制作の版画が飾ってあります。 あまり大きくて、版画だと気づかないかも知れません。

話は戻りますが、私が平成7年10月に開業した時に、小田桐さんから『小田桐清一自撰板画集』を 記念にいただきました。 この板画集は、小田桐さんが画暦40年と古希を記念して作品約200点の中から60点余りを自撰して 画集にまとめたもので、平成7年9月に出版した直後のことでした。 この自撰集には、昭和29年から年代順に作品が収められており、岩木山、お寺、津軽33霊場、 津軽じょんがら節、手古名句集、観世音菩薩など、津軽を題材にしたものがほとんどです。 もちろん、今回いただいた『鳳凰』と『誓願寺山門』も収められています。

カメラマンが下手なものですから、絵顔を撮れませんでしたが、終わったとたんに笑顔を見せてくれました。 助手は井上真利子さんです。 井上さんは笑顔を作るのが得意ですが、この写真では小田桐さんに合わせてくれました。

なお、版画と板画を混ぜて書いていますが、これは誤植ではありません。 調べて見ますと、棟方志功は昭和18年頃から木版画のことを『板画』と表現し、 昭和27年に『日本版画協会』を脱退し、『日本板画院』を創設したのだそうです。 『版画』を『板画』と書くのは「板の命」 を彫り起こすという棟方志功の芸術観によるものなのだそうです。