吉澤忠司先生

大学を卒業した新人医師は、研修を希望する病院とマッチングと呼ばれる方法で病院を決めます。来年4月には、青森県内で62人の新人医師が研修を始めることが決まっています。2年間の研修期間中に、内科、外科、産婦人科などで研修を行い、基本的診察能力を身につけることを目標にしています。その中のひとつに「地域医療研修」があり、主に開業医で1ヶ月研修することが義務づけられています。

沢田内科医院では、地域医療研修を担当する研修協力医療機関として、今年も弘大附属病院から研修医を迎えました。今回の研修医は、吉澤忠司先生でした。10月1日から31日までの1ヶ月間の研修でした。吉澤先生は、秋田県の大館総合病院で1年間研修の後、2年目は弘大附属病院で研修しています。救急患者さんの診療経験はありますが、慢性疾患が主体の外来患者さんを診察した経験はほとんどありませんでした。

1ヶ月間での研修成果は限られますので、患者さんの話を聞いて診察し体の所見を取ることと、腹部超音波検査で基本的な異常が分かるようになること、この二つを目標としました。広島出身の吉澤先生には、生の津軽弁に面食らったこともあったようですが、何とか話を聞いていました。検査に頼らず自分の五感を使う身体診察では、甲状腺、腎臓、脾臓、肝臓を触れることを繰り返し、かなり上達しました。超音波検査は1ヶ月やそこらでマスターできるようなものではありませんが、皆さまのご協力により経験例を増やすことができました。

たくさんの患者さんの中には、すぐに対処しなければならない病気の人が混じっています。普通は救急車で運ばれる心筋梗塞や脳梗塞の患者さんが、開業医には自転車で来たり、中には自分の車を運転してくることがあります。吉澤先生が研修中も、救急車に乗り換えて大学病院へ向かった患者さんが何人かいました。大きな病院で研修していると、診断がすでについている患者さんを診ることが多く、きっと貴重な経験になったと思います。

若い医師の中には、大きな病院での医療は分かりますが、開業医でどのような医療が行われているかを知らない人がいます。通院する患者さんの数は、病院よりも開業医が多いことも知られていません。私自身も若い頃は知りませんでした。新人医師の研修制度は変わってきていますが、若い頃に地域医療を経験できる「地域医療研修」は残して欲しいものです。吉澤先生は、来年4月には弘大消化器外科に入ることが決まっています。これからも青森県のために頑張ってくれることでしょう。