私は、受診する皆さんに積極的にがん検診を受けるように勧めています。高血圧や糖尿病で通院する皆さんには特にがん検診の重要性を強調しています。がん検診を受けるということは、がんを早期に発見して早期に治療することです。ただ、診察する短い時間で理解してもらうことは大変むずかしいことです。10年以上も話し続けて、やっと自発的にがん検診を受けてくれる人が多くなってきました。

最近、私の友人で、国立がんセンター検診研究部長である齋藤博先生から、説得力のある言葉を教えてもらいました。がん検診を受ける意味は、『早すぎる死』を避けることだというのです。現在、男性の平均寿命は79歳、女性が86歳です。最終的には、誰でも死ぬわけですが、がんを早く発見して早く治療するということは、『早すぎる死』を招かないことなのです。

平成20年にがんで亡くなった人は34万人でした。私が関係する消化器関連では、5万人が胃がんで、4万人が大腸がんで亡くなっています。また、肝臓がんで3万人が亡くなっています。他に乳がんで1万1千人、子宮がんで6千人が亡くなっています。日本では肺がんで亡くなるのが一番多く6万5千人です。ちなみに、平成20年に、日本全国で亡くなった人は114万人でした。赤ちゃんは109万人生まれています。

34万人というのは死亡した数です。がんになった人はもっと多いわけです。胃がんと大腸がんは12万人ほどと言われています。がんになった人と亡くなった数を比べてみれば分かりますが、胃がんや大腸がんは早く見つけると助かるということです。つまり、がん検診をきちんと受けていると、『早すぎる死』を防ぐことができるということです。乳がんも、年に4万人が診断されています。乳がんも、がん検診で診断されるよりも、自分で乳房のしこりを触れて受診する数の方が多いのだそうです。

がんと診断された人がどのようなきっかけで分かったかをみると、がん検診や人間ドックなど健診で診断されたのは全体のたった17%だそうです。まだまだ、具合が悪くなってから見つかっている人が多いということです。逆に言うと、がん検診でもっともっと早く見つけ、『早すぎる死』を防ぐ余地がたくさんあるということです。

がん検診の目的は、『早すぎる死を防ぐため』です。今の日本、弘前では、がん検診を受ける機会はたくさんあります。そのような状況で、むだに『早すぎる死』を迎える必要はありません。がん検診を積極的に受けることで、『早すぎる死』を迎えないことです。どんな形であっても、1年に1回は胃と大腸の検査を受けましょう。乳がんと子宮がん検診は2年に1回です。肺がん検診も大事です。そして、『早すぎる死』を避けましょう。