糖尿病の患者さんは年々増えています。私たちの医院でも、200人ほどの患者さんが通院しています。 糖尿病の怖いところは、知らないうちに合併症が進むことです。糖尿病の三大合併症として、 ①糖尿病性網膜症、②糖尿病性腎症、③糖尿病性神経障害、が知られています。 糖尿病が原因で失明する人は、全国で年間4,000人を超えています。 腎不全となり透析を始める人は年間約12,000人です。青森県が全国の1%だとすると、 県内では失明する人が年間40人、透析が120人となります。

さて、糖尿病というと反射的に食事療法を思い浮かべると思います。 糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンが不足しているのではなく、インスリンの働きが悪くなっている場合が大部分です。 このインスリンの働きをよくするために食事を制限する必要が出てきます。 大部分の糖尿病患者さんは、その人が必要としている以上のカロリーを摂っているからです。 食べるカロリーを少なくして血糖値を低くするとインスリンの働きがよくなります。 インスリンの働きがよくなると、さらに血糖値が低くなります。

糖尿病の患者さんに食事の話をすると、少なからぬ人が、『かねばえんだべ』と言います。 でも、生きるためには食べなくてはいけません。 ここで重要なのは、自分が社会生活をしていくことが中心で、糖尿病を治すことが中心ではないということです。 患者さんの中には、生活の中心に糖尿病を置いて、糖尿病に振り回されている人がいます。 これは間違いだと思います。自分が生きていくために、自分の周りにある糖尿病をコントロールする必要があるのです。

お孫さんの誕生日には、家族みんなでケーキを食べてお祝いしましょう。 お正月には、家族みんなで美味しいお料理をご馳走になりましょう。 糖尿病だからといって、一人で指をくわえている必要はありません。 家族みんなで生活するのが中心ですから。ただし、美味しいケーキを食べた後のカロリーはどこかで調整しましょう。

糖尿病でも糖分は必要ですし、脂肪も必要です。 糖分、脂肪、たんぱく質の割合は、糖尿病患者さんも病気がない人と同じです。 糖尿病だから糖分を少なくするわけではありません。ただ、全体のカロリーを少なくする必要があるのです。 ある一品を少なくしても、どうしても他のものを多く食べてしまいます。 ですから、全体を少しずつ少なくすると上手くいく場合が多いです。

糖尿病食という特別な食事はありません。 栄養のバランスがとれた、適切なカロリーの食事を一般に糖尿病食と呼んでいるだけです。 いつも食べている食事で特別なものではありません。