新型コロナウイルスは「正しく恐れる」のだとマスメディアは言います。正しく恐れるってどういうように恐れるのでしょうか?今の状況を見ていると、とても正しく恐れる状況にはほど遠いような気がします。しかし、今の新型コロナウイルス感染症がすぐに収まるとは思えません。みんなで、このコロナウイルスがどんなウイルスなのかを理解して暮らしていくことが必要だと思います。そして、私たち医療者はこれを一般の人たちに知ってもらうようにする役割を担っているのだと思っています。
新型コロナウイルスは私たちにとってはこれまで出会ったことがないウイルスですので、どのように対処したらいいのか分かりません。しかし、私たちは全くの素人ではありません。ウイルスのことや公衆衛生的な対応の仕方が全く分からないわけではありません。私は血液疾患を専門にしていましたので、青森県で第1例目のエイズ患者さんの治療にあたりました。平成21年の新型インフルエンザ対策にもあたりました。その中で学んだことは、情報を鵜呑みにするのではなく、自分たちの状況を考えながら対応するということです。
10月に弘前市内の小中学校の先生方を対象にコロナウイルスについての研修会を行いました。その中で強調したのは、学校の中ではこうして下さいという具体的な対応策は示しませんということでした。ウイルスとはどういうものか、一般的に感染症に対処するにはどうするのか、それを踏まえてそれぞれの立場で考えて対処して下さいということでした。弘前市内には児童生徒の数が10人にも満たない学校から400人近い学校までさまざまな規模の学校があります。それぞれの学校で同じ対応をしても現実的ではないことがたくさんあります。よく考えて対応してできるだけ活動が制限されることがないようにする必要があると思ったからです。
これまでの知識や経験を基にして対応し、失敗しながら先に進んで行くことで対応策が次第に明らかになることを私たちは知っています。沢田内科医院では新型コロナウイルスに感染した患者さんが入院するという貴重な経験をしました。この状況にどのように対処したかを医療関係者だけでなく一般の人たちとも共有することが重要だと思いますので積極的に公表しています。
新型コロナウイルスは他のウイルスと同じように私たちの生活の中に存在し続けると思っています。パパはコロナウイルスの患者さんに関わっているし、おじいちゃんは医師会でコロナウイルス対策にあたっている。こんな状況では、孫たちは家で遊んでいるしかありません。保育園のスタッフがいかに理解してくれても、通園している子どもたちの保護者全員が理解してくれなければどうにもなりません。ワイドショー的な情報に振り回されないで正しい知識を持って正しく恐れて暮らしたいと思います。
第120号より