先月は弘前近郊にお住まいの方にとって、これまで経験したことのない不安な日々であったことと思います。10月12日に弘前で1例目の患者さんが確認され、その後みるみるうちに200人以上の陽性者がでました。小さな田舎町ですからあることないこと噂はどんどん拡がり(美彦が感染したというデマも聞きました)、そして喉元過ぎれば熱さ忘れるで、いつの間にかまた落ち着きを取り戻しつつあります。それでも11月14日現在、まだ34名の方が入院治療されており、医療機関ではまだまだ緊張が続いています。

通院中の皆様にはお手紙でもお知らせしたとおり、当院でも新型コロナウイルス感染の患者さんを入院でみるという経験をしました。幸いなことに患者さんはその後軽快され、職員や同時期に入院されていた患者さん、付き添いの方に感染は確認されませんでした。今回の対応でよかったこと、悪かったこと、反省点いろいろあります。それを記録しておきたいと思います。


■10月18日(日)

 近隣の病院の先生から電話があり、当院に前日まで肺炎で入院されていた方のご家族が新型コロナウイルス陽性と診断されたとのことであった。すぐに保健所と患者本人に新型コロナウイルス感染が疑われることを連絡した。

 当院で外来や入院で接触があった看護師さん、患者さん、付き添いさんをリストアップした。休日であったため、ひとまず新型コロナウイルスの抗原検査キット(検査精度はPCRに劣るが15分で結果がわかる)を持っていた開業医の先生から10個借り受け、医師2人看護師8人を検査し全員の陰性を確認した。

20時に保健所から患者さんが陽性と判定されたと連絡あり。今後の対応については濃厚接触者を確認し、検査等は医師会を通して行ってくださいとのことであった。翌日来院される患者さんのために入口に張り紙で、検査、診察は中止し基本的に薬処方のみになることを周知した。翌日エコーや胃カメラ検査予定の方には電話連絡でキャンセルをお伝えした。職員にも今回の経緯についてまとめて、師長さんから連絡してもらった。


■10月19日(月)

 65歳以上のインフルエンザワクチンの無料接種が開始となる日であったため、予防接種と処方のみを行った。それでも170名の患者さんが来院された。近隣の開業医さん、問屋等から新型コロナウイルス抗原検査キットを合計67個手に入れた。入院期間が重なる患者さん、付き添いさん、外来点滴の患者さんを抗原検査キットで調べる方針とした。職員は抗原検査で全員陰性、午後には弘前PCRセンターでPCR検査を行った。

入院時に病歴聴取で15分以上の接触があった看護師1名は濃厚接触者としてこの日から25日まで自宅待機とした。公立小中学校はこの日から25日まで休校、夕方のニュースで飲食店の31日までの休業要請、秋祭りの中止が報じられた。国のクラスター対策班が弘前保健所に入った。


■10月20日(火)

 職員で体調不良者なし。117名の患者さんが来院された。前日に引き続きインフルエンザの予防接種と、接触者の抗原検査を継続。17名の職員について健診で胸部X線撮影も行ったが肺炎所見のある職員はいなかった。翌水曜日の検査もキャンセルとした。市の集団健診も25日まで中止と報道あり。鰺ヶ沢町役場でも3人目の陽性患者が出た。


11月12日 夕方のNHKニュース

■10月21日(水)

 職員で体調不良者なし。この日職員全員のPCR検査陰性が確認された。PCR検査がわかるまでの2日間はかなりドキドキしていたので、ホッとした。


■10月22日(木)
 職員全員のPCR陰性について玄関の張り紙を更新した。25日まで診察、検査は中止とし、観察期間の明ける10月26日より検査再開予定とした。ただ弘前市内の感染状況が定まらないため診察は最小限に。特定健診やがん検診の結果は診察に入らず郵送で確認いただき、明らかな異常があればその場で説明する方針とした。

医療者だけでなく患者さんも感染防御

採血結果も次回以降確認、明らかな異常は電話連絡。今回の経緯について4月から10月まで通院中の患者さん約3500名を対象に手紙で郵送することとした。また、職員の関係者(家族の職場、学校や施設、保育園など)に報告するための書面を作成し、職員全員に渡した。緊急の内視鏡も2件あったが、換気しながら予防衣を着用、N95マスクをつけて行った。入院になる患者さんには症状の有無にかかわらず、新型コロナウイルスの抗原検査を行うこととした。


■10月23日(金)~10月25日(日)

 職員で体調不良者なし。手紙と同内容のお知らせをホームページのトップに掲示した。
10月25日、東奥日報朝刊に当院での新型コロナウイルス感染患者の発生とその対応について記事がでた。


内視鏡検査時のエアロゾル対策

■10月26日(月)~11月1日(日)

 特定健診と腹部エコー、胃カメラ検査を再開した。検査室は少し寒いが換気して、患者さんにも予防衣、マスク、手袋を着用し退室時に脱いでもらうこととした。むせたり、咳込んだりするとエアロゾルが発生するので、無症状の方からの感染を防ぐために行うことにした。検査医、介助者はN95マスク着用。結果は基本的に口頭でお伝えし、正式には郵送で結果確認いただくこととした。


■11月2日(月)

 通常診療再開。11月4日からPCRセンターを通さなくても当院でPCR検査できる体制を整えた。


■11月12日(木)
 夕方のNHKニュースの特集で当院での新型コロナウイルス感染対策の取り組みについて放送された。開業医でも感染対策をして診療していることを知ってもらういい機会であった。


■反省点

・患者さんは10月初旬に肺炎で受診された。おそらく弘前1例目の方と同じくらいの発症時期である。9月の3連休でたくさんの観光客が弘前を訪れており、その頃の弘前公園の様子を思い出すと市民もかなり外に出ていた。その2週間後ということで(あとから考えると)警戒すべき時期であった。正直、自院で弘前1例目をみつけるという気概でみていたわけではなかった。

発熱患者さんの駐車場診療の様子

・そのため新型コロナウイルスの抗原検査キットを常備していなかった。疑いの方は弘前PCRセンターで検査をするつもりだったが、結果がわかるまで早くても2~3日はかかる。できるだけ早めに感染の可能性を調べるため、精度は劣るものの抗原検査キットも必要なことがわかった。

 新型コロナウイルスはこれまで経験したことのないタイプの感染症です。他の医療機関とも(失敗を含めて)情報を共有しながら対応していきたいと考えています。



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