耳にかみついたマダニ

 4月に診療をはじめてからダニに噛まれた患者さんが数名こられました。ダニと言ってもホコリダニやヒョウヒダニのように肉眼でほとんどわからない小さいものから、マダニのように普通に目で確認できるものまで様々です。畑で作業をして家に帰ってから風呂に入った時に気づいたり、家族に指摘されて判明することが多く、蜂のように刺された瞬間にわかるものではないようです。

 私も実物のマダニは今回はじめて見ました。血を吸っておなかの袋が膨れ上がっているので肉眼で観察可能でした。口がノコギリのようにギザギザしているのか、ただ引っ張ってもなかなか抜けません。おそらく真皮という深い層まで刺さっているものと思われます。キシロカインゼリーという局所麻酔薬をかけて、注射針の先端で皮膚を少し切開して歯が残らないように除去します。

 青森県ではまだ確認されておりませんが、西日本ではSFTS(重症熱性血小板減少症候群)という病気が最近注目されています。ウイルスを持ったマダニに噛まれると6~14日後に発熱や消化器症状で発症するようです。国立感染症研究所の調査によると2013年から2020年5月までの期間で517名の報告があり、うち70名が亡くなっています。有効な治療薬やワクチンがないこともあり致死率はかなり高いです。噛まれないように予防することが唯一の対策になります。

 ダニに関連する感染症として身近なものではツツガムシ病があります。ツツガムシ病はリケッチアという菌を持ったツツガムシ(小さなダニの一種)に刺されると感染します。刺されてから5~14日で39度以上の発熱と淡い発疹がでます。刺された跡にかさぶたができて赤く腫れる方もいますし、全く刺し口がわからない人もいます。私もこれまで数例経験しましたが、全員高熱で来院されておりました。採血で血小板(血を止める働きをしている成分)が著明に少なくなるので、それをヒントに抗体検査を行い診断されることが多いです。ツツガムシ病は特効薬があるので、疑って治療さえすれば数日で軽快します。

 暖かくなり、畑に出たり山に入ったりする方も多いと思います。咳やたん、鼻水のような風邪症状がないにもかかわらず、発熱が続く場合はご注意ください。