がん検診の受診率を上げるため、国が地方自治体に払う地方交付税のうち、がん検診への利用を見込んだ分が今年度2倍に増えました。しかし、それを受けてがん検診予算を倍増させた市町村は非常に少ないようです。

平成21年度の地方交付税のうち、がん検診の分を前年の650億円から1,300億円に増額したと新聞に書かれていました。交付税は他の目的の分を合わせて一括して払われるため、使い方は市町村の判断に任されています。つまり、お金には色がついていませんので、1,300億円が交付されたとしても、他の目的に使っても分からないわけです。

今年度も終わりですので、私は弘前市役所のがん検診に関連する部署と市議会議員に弘前市の状況を伺ってみました。総務省ががん検診の交付税を倍増したといいますが、がん検診事業に直接携わる私にさえ、それが実感として全く感じられなかったからです。がん検診の項目が増えたわけでもないし、受診率を上げようと仕事が増えているとも思えません。がん検診関連の職員が増えたわけでもありません。市役所の仕事がどのように運営されているのか分かりませんが、やはり予想したように、がん検診の交付税が2倍に増額されたことは知りませんでした。

日本対がん協会によると、がん検診の受診率を上げるため対象者に個別に連絡したり、受診率向上に熱心な市町村ほど、交付税増額に敏感に反応して今年度のがん検診予算を増やしたとのことです。がん検診では、対象者へのきめ細かい働きかけが受診率を押し上げることが分かっています。人と人とが係わるようにすることが必要なのです。そして、そこに予算を使うべきなのです。

私は外来では繰り返し繰り返しがん検診を受けるように話しています。そして、ニュースレターにも繰り返し書いています。それは、日本のがん検診で助かる人が多いことはもちろんですが、沢田内科医院に通院する人たちの中に、がん検診でたくさんの癌が見つかっているからです。

がん検診は、市民の命を守る大事な事業です。そして、検査自体は病院で行いますが、がん検診事業自体は市町村の仕事なのです。弘前市は、市民の命を守るために、もっともっとがん検診事業に取り組むべきだと私は思います。そして、皆さんも、たった80年しかない人生ですから、「早すぎる死」を迎えないようにがん検診を受けて下さい。