改装した正面玄関には私が中学生の頃に描いた絵が1枚飾られています。船の絵です。これは弘前第二中学校に通っているときに写生大会で鰺ヶ沢漁港に行って描いたものです。水彩画ですが油絵のようなドラマチックな仕上がりになりました。作りたての小ぎれいな白い船ではなく、ところどころにある錆びつきがこれまでの長い年月を思わせたからです。船はただそこにあるのではなく、荒波や風雪に耐えてなおそこで朽ちずに次の出航を待つ、そういう佇まいを表しました。弘前市の展覧会で金賞をとった記念すべき作品です。

 「絵が上手だね」友達にそういう言葉をかけられて、「ああ自分は絵が得意なんだ」と小学校高学年の頃に素朴に思っていました。絵は授業中も、家で勉強をしている「ふり」をしているときでも白い紙と鉛筆さえあれば書くことができます。あまり先生の話を聞かずぼんやり暮らしていましたので、教科書もノートも落書きだらけでした。中学校では美術部に入りました。担当の先生はとにかくよくほめてくれました。そしてこの絵の具を使ったらいいよと教えてくれたのがホルベイン社の絵の具でした。ホルベインの絵の具はそれまで使っていた絵の具とは色のテイストが異なっていました。特に緑色が独特で、その色を生かせるような題材を選んで描くようになりました。船の絵ももちろんその絵の具を使って描きました。何か一つ自信を持つことができただけで、自分の居場所ができたような気がしました。それがうぬぼれにとどまらず、対外的な評価をもらったことは自分でもやればできるんだ!という大きな自信になりました。これはのちに大学入ってから音楽活動をするときにも大きな糧になってくるのですが、それはまた別の機会に書きたいと思います。