弘前市医師会看護専門学校では入学者の減少により募集定員を満たせない状況が続いています。高校生の進学状況を考慮し、いかに入学者を確保するかを考えてみたいと思います。
全国の大学の令和6年度の入学者数は約61万人でした。私立大学が約48万人、国公立大学が約13万人です。私立大学では年々学生確保に苦しむ大学が増えており、令和6年度は約6割が定員割れの状況です。18歳人口は1992年に約205万人でしたが、令和7年1月時点で約109万人にまで減少しました。文科省は2050年の大学入学者数は現在の水準から3割減の約43万人になるとみています。一方、大学の数は短大から4年制への転換や学部新設などで813校まで増えているのが実情です。18歳人口が減少している一方で大学進学率が約58%まで上昇し入学者数は何とか確保できていました。しかし、ここから先は大学淘汰の時代になることが予想されています。
学力試験での大学の一般入試は2月以降に行われます。これに対して総合型、推薦型といわれる入試では12月までに入学者を決めますので年内入試といわれています。最近、年内入試で入学先を決める受験生が半分を超えており、2月からの一般入試で進学する受験生は減少してきています。これは、「早く確実に受かる」ために、自分の実力にあった大学を総合型・推薦型で受ける学生が増えているからです。そして早く入学者を確保したい私立大学では総合型・推薦型で学生を早めに確保したいという思惑があります。このような状況で令和5年度入試では大学全体の一般選抜比率は約48%と半数を割り、初めて年内入試の割合が半数を超えました。私立大学の一般選抜比率は約40%まで縮小しています。
青森県内の看護師養成機関の状況を見てみます。弘前大学と青森県立保健大学は定員が185人で入学者は192人でした。4つの私立大学は定員が280人で入学者は202人でした。准看護師の免許を持つ人が入学する2年制の5つの看護学校は入学定員が275人、入学者が104人でした。2つの3年制看護専門学校は定員が90人、入学者が61人でした。中学校から入学する3つの高校看護科は定員が120人で70人が入学しました。まとめますと、青森県全体で3つの高校を含めて看護師定員850人で入学者数は629人でした。弘前大学、県立保健大学、弘前総合医療センター以外はすべて定員を埋められませんでした。つまり、この3つの学校以外はすべて入学者確保が困難な状況にあるということです。
弘前市の18歳人口も年々減少しています。数年前は高校3年生の人口は約1600人でした。現在は約1400人です。現在、中学校の1学年は1200人、昨年生まれた子どもは約800人です。どのような少子化対策を行ってもこの現実は変わりません。なお、弘前市の人口は約16万人で、医師会看護専門学校の志望者はその周辺を含めた約30万人を背景としています。
弘前市医師会看護専門学校准看護学科は定員が80人です。これに対して入学者数は昨年が59人、今年は61人と定員を割っています。看護職員を供給するのが役割ですが、この状況ではその役割を果たすことができません。
弘前市医師会看護専門学校では18歳人口の減少で入学者を確保するのが難しくなることから社会人の入学に力を入れてきました。最近10年間の准看護学科入学生の社会人割合(高校からの直接進学ではない人)は平均37%(18~48%)でした。ここ2年間は准看護学科の入学者は20人程度の欠員状態ですので、社会人を受け入れていなければ大幅な欠員状態をきたしていたものと思われます。
現実の医療現場では看護師が足りていません。定員割れが続くと授業料などの収入が減りますので運営する医師会の財政的な負担が大きくなります。その結果、授業料の値上げなどが必要となり学生の負担も大きくなります。ですから、学生あるいはすでに就業している人にいかに看護職を志望してもらうかが課題なわけです。高校を訪問したりオープンキャンパスで学校を知ってもらい、受験する学生を一人でも多くすること、就業者には看護師養成の情報を流して希望者を掘り起こすことなどが必要です。新聞などを通して看護専門学校の内容と特徴を知ってもらうこと、ホームページやSNSの利用により情報を発信していくこと、募集地域の範囲を広げていくことなども必要です。高校生は3年生になると早期に進学先を決めることが多くなっていますので、オープンキャンパスは高校1年生、2年生も対象としています。年内入試が広まるとともにこのような対応がますます必要となります。このように様々な手段を講じて弘前市医師会看護専門学校の入学者を確保し地域に看護師を供給できるようにしたいと思っています。




第141号より