早期胃癌

 当院で胃カメラ検査を受ける方は毎年2000人ほどです。外来の間をぬって、毎日10人前後の検査をしています。令和2年度は内視鏡胃がん検診として令和2年8月1日より令和3年2月24日までの途中経過で767人の方が検査を受けました。そのうち12人(発見率1.6%)の方が胃癌と診断されました。幸いにしてほとんどの方が内視鏡治療を受けられ完治しています。

 胃カメラの検査は基本的には鼻からの検査になります。鼻の穴の中にスプレーで麻酔をして、スコープを入れて食道、胃、十二指腸の入り口までを観察します。鼻が狭くてどうしても入っていかない方は口からになりますが、細いカメラなので思ったよりもオエオエしなかったという方がほとんどです。だいたい時間にして4~8分くらいです。

 胃癌を疑う部分があった場合は、2~3個つまんで採ってきて病理検査(顕微鏡で癌かどうか精密検査すること)に出します。つまんでとってきますが痛みはありません。結果は1週間前後でわかります。

 胃癌には「早期胃癌」と「進行胃癌」があります。文字通り「早期胃癌」で見つかる方がその後の経過がいいのです。「進行胃癌」は大きくて、深く食い込んでいる癌です。胃の裏側のリンパ節や肝臓など他の臓器に転移していることもあります。胃が痛かったり、出血して貧血になったりしますので、いろいろ症状も出ます。治療はお腹を外科手術で切ったり、抗がん剤治療になったりと負担もとても大きくなります。

 「早期胃癌」の場合は内視鏡治療になります。当院では主に大学病院にお願いしています。5~7日くらいの入院で口からの内視鏡で治療することになります。口からの内視鏡ですが、鎮静剤(眠る薬)を点滴で入れてからやりますので治療している間は覚えていない方がほとんどです。魚の皮をはがすように、その部分だけ切除するので体への負担はとても小さくなります。人工的に小さい胃潰瘍を作るような治療ですので、お腹を切る治療に比べれば痛みも小さいです。治療に要する時間も、普通の生活に戻るまでの時間も短いので負担は全然違うと思います。

 胃カメラの検査をする方には必ずピロリ菌の検査も受けてもらっています。ピロリ菌感染と加齢が胃癌に最も関連しているからです。息を吹き込んで調べる検査と便をもってきて調べる検査の2つで診断します。ピロリ菌がいることがわかれば1週間の内服治療をおこないます。大事なのは除菌治療した後のことです。ピロリ菌を除菌してしまえば胃癌にならないわけではありません。そのままにしておくよりは癌になる確率は低くなりますが、ゼロになるわけではないので年に1回の胃カメラ検査をおすすめしています

 定期的な検査をおすすめする理由は「進行胃癌」ではなく「早期胃癌」でみつけるためということに尽きます。胃癌が出てくるとしても「早期胃癌」でみつければ負担の少ない治療で完治が見込めるのです。癌には防げる癌と防ぐことができない癌があります。胃癌は検査さえ定期的に受けていれば命を取られることはない癌になりつつあります。胃カメラの検査はこわい、抵抗があるという方がまだまだ大部分だと思います。少しでも楽に安全に検査ができるよう、そして多くの方が検査を受けることができるような体制を整えていきたいと思います。