首都圏では3月21日で緊急事態宣言が解除され、世の中も少しずつ自粛ムードが緩和されてくるのかもしれません。1つ1つの大きな流行は、人と人との接触を避けることによってそれなりに抑制できることは経験的にわかってはきましたが、ゼロになるわけではなく未だ燻り続けているのが現状です。

この状況を変えるものとして最も注目されているのがワクチン接種です。現在日本に入ってきているワクチンは-70度での冷凍保存が必要で、2回接種のファイザー社製ワクチンです。保存条件が緩和されたり、1回接種でよかったりするものなどこれからよりいいものが出てくるかもしれませんが、今のところ日本では2回接種のものを進めていくことになると思います。

ワクチンの効果は数字でみてみるとわかりやすいと思います。ワクチンをうった18000人とワクチンをうってない18000人の集団。ワクチンを打って7日目以降で、ワクチンをうたない集団からは162人の感染者、一方でワクチンをうった集団からは8人しか感染者が出ませんでした。全く感染しないというわけではありませんが、かなり数が少なくなるのがわかります。それをもって有効率が95%と報道されているのです。

すでに全世界でたくさんの方がワクチンを接種されており徐々にその効果が現れてくるのではないかと言われています。3月17日現在、人口888万人のイスラエルでは全人口の55%の方が1回目の接種を、2回目の接種も46%の方が終えているようです。1日あたりの感染者数は1000人以下となり、マスクの着用義務の解除が検討されているとのニュースがありました。75%の方が接種すれば集団免疫が期待されるようです。

ワクチン接種で心配しているのは「ワクチンを打ってコロナになってしまうのではないか」とか「死んでしまうのではないか」ということではありません。医療者側としてはアナフィラキシーショックというアレルギー反応を一番心配しています。特定の薬や食品を口にしたり、スズメバチに刺されたりしたときに、全身の皮膚が真っ赤に腫れて血圧が下がり、息苦しくなってしまう過剰なアレルギー反応のことです。アナフィラキシーショックには確立した治療法がありますし、これまで予防接種でアナフィラキシーが出た人以外は特にやってはいけない理由はありません。

日本では3月18日現在、49万人(全人口の0.4%)の方が1回目の接種を終えています。主に医療従事者です。4月12日以降に65歳以上の高齢者への接種が始まる見込みです。ワクチンの接種場所については自治体により体制が異なります。地域の医療機関の体制や余力にばらつきがあるためです。弘前市はかかりつけ医での接種(個別)がメインで行われる方針となりました。西目屋村は集団接種ですが、これは当院で行われますので大きな意味ではかかりつけ医での接種に近いものになります。

大きな体育館などに人を集めて予防接種をやるには、時間、場所、費用、人員、感染対策など普段の診療以外に別に用意する必要があります。リハーサルをしている自治体の映像などを見ますと、問診票の記載に一番時間がかかっているようです。またこうした大きい会場は医療機関ではありませんから、前記のアナフィラキシーショックなどの非常時には医療機関まで救急車などで運ばなくてはなりません。その点、かかりつけ医(あるいは近隣の開業医などの医療機関と言った方がわかりやすいかもしれません)であればその場で酸素投与、点滴、薬剤投与などの治療が可能です。前述の問診票の記載についても、普段の内服薬やこれまでの病歴、過去のインフルエンザ予防接種の問診票などの記録がありますので時間的にも節約できる部分が大きいのではないかと思われます。

ワクチンは個人を守るという意味合いもありますが、以前のような世界に戻るための(今のところ)唯一の方法だと思います。これまで何かの予防接種でアナフィラキシーショックを起こしたことがある方以外は、基本的には皆受けた方がよいと考えています。今はワクチンそのものの供給がかなり滞っており、少しずつしか各県に届いていない状況ですが、順番が来たらすぐに対応できるよう準備を進めています。