柔道の選手である中学1年生の慎太郎君が青白い顔をして外来に来ました。一緒について来たお母さんに似て、立派な体格をしていますが、声を出してはっきり聞こえるように話すことがあまりありません。少し恥ずかしがり屋のところがあります。

咳があり、のどが痛い、体がだるいなどという症状があり、どうも風邪をひいたらしい。その頃は、ウイルス性の胃腸炎で受診する子どもが多かったので吐き気、下痢がないかを聞いた。そして、「ご飯は食べましたか?」と聞くと、「・・・・・・・・」と答えません。いつも声に出してはっきり答えてくれることが少ないので、私は「食べたの、食べなかったの?」と聞くと、頭で食べないと答えました。「食欲がなくて食べなかったの?」と聞くと、頭を横に振ります。「吐きそうで食べられなかったの?」と聞いても、頭を横に振ります。そこで、「お母さんが用意してくれなかったから食べなかったの?」と聞くと、頭を縦に振りました。そばにいたお母さんは「・・・・・・・・」と開いた口がふさがらなくなってしまいました。

それから1ヶ月ほどして、同じ症状で慎太郎君が受診しました。恥ずかしがり屋なのか、この時もハイ、イイエで答える質問でしか状況を聞き出すことができませんでした。質問の最後に、「ご飯は食べましたか?」と聞くと、「お母さんが用意してくれなかったので食べていません」と初めてはっきりした大きな声で答えてくれました。そばにいたお母さんは立つ瀬がありません。「・・・・・・・・☆!?。でも、この子、昨日の夜は2合も食べたんですよ!!」と。

お母さんの話だと、医院に来る直前まで寝ていて起きてこなかったのがご飯を食べて来ない本当の理由のようでした。柔道ができる体格の慎太郎君ですので、普段は人一倍ご飯を食べているのでしょう。症状を軽くするために薬を少し出して、「もう少し気合を入れるように」と教育的指導をして診察は終わりました。