日本語論文
Helicobacter Research 21:518-523, 2017

がんや感染症など専門的なことについての講演や市民を対象にした健康講話などはたくさん行っています。大学にいた頃や勤務医の頃は当然のことだったのですが、昨年は久しぶりにちょっと学問的な活動を行いました。医学雑誌にピロリ菌に関する論文を書いたのです。

ピロリ菌に関して一般的なことは分かっていますが、それじゃ、それが弘前市民にもそのまま当てはまるのか?実際のところは分かりません。感染している割合はどうなのか?治療に対する反応はどうなのか?副作用の率はどうなのか?

これまで弘前市に対していろいろな提案をしてきました。その中で弘前市民が胃がんで亡くなるのを少なくしようと強力に提案してきました。その結果、平成26年から胃がんリスク検診が行われています。そして、昨年は中学生に対するピロリ菌除菌事業が始まりました。

これらを実現するための基礎データとして、弘前市でのピロリ菌の実情をいろいろ調べてきました。弘前市でのピロリ菌が一般的に言われているピロリ菌の状況と同じなのかどうかを確認して、理論的な根拠を持ちたかったのです。

開業医ですので、完全に研究的なことをしている訳にはいきません。診療しながらその中で興味があることを調べるしかありません。ピロリ菌は胃がんの原因であることが分かっていました。そして、平成25年から胃炎に対してピロリ菌治療が保険診療でできることになりました。それ以降、沢田内科医院では約1,500人に対して除菌治療を行ってきました。

ピロリ菌の治療成績がどうなのか?そもそも検査の信頼性はどうなのか?ピロリ菌が感染した胃は内視鏡ではどのように見えるのか?確認したいことがたくさん出てきました。ピロリ菌関連のことは、弘大消化器血液内科と連携し、福田眞作教授、下山克准教授、珍田大輔先生のアドバイスを受けて進めてきました。

英文論文
Japanese Journal of Infectious Disease 70: 207-209, 2017

まず、検査方法がどれくらい信頼できるものなのかを調べてみました。その中で、尿中のピロリ菌抗体の検査方法を検討してみました。目的は2つでした。安い簡便な方法が使えれば、沢田内科医院に通院する患者さん全員の尿検査をしようと思ったこと。そして、もう一つの検査方法が中学生のピロリ菌の検査に使えるかどうかを確かめることです。この目的で基礎データを集めました。その結果を、下山先生が英文の論文として公表してくれました。

弘前市で胃がんリスク検診を始めましたので、弘前市民のピロリ菌の感染率が判明しました。また、沢田内科医院でのピロリ菌の治療成績も積み重なりました。ピロリ菌の検査方法に関して明らかになったこともありました。これらの内容を、下山先生が編集委員を務めるピロリ菌の専門誌に書く機会がありました。沢田内科医院で行ってきたピロリ菌のことをこのような形で公表することができ嬉しく思っています。