「毎日新聞」に運転免許並みの医師免許の更新が必要だという記事がありました。 『自動車運転免許には更新制度や免許停止時の講習があるにもかかわらず、 なぜか、医師免許には、このような制度がない。』とか、 『医師免許は投薬や手術といった、危険性がある行為を正当化するのだから 、運転免許同様、定期的に更新する制度が当然必要だ。 しかし、運転免許のような形式的な更新制ではなく、研修と試験を課し、 不合格なら医師免許を停止・はく奪すべきである。』という意見を載せています。 私はこのような自動車免許と医師免許を同じレベルで論じているのに違和感を感じます。

ひと口に医師といっても、いろいろな医師が存在します。 毎日、心臓の手術をしている心臓外科医、高度な技術を要する脳外科医、産婦人科医、皮膚科医、 私のような一般内科医、体から取り出した組織で病気を診断する病理医、 保健所や検疫所など公衆衛生分野で働く医師、さらには、異状死体を解剖して死因を特定する法医学に従事する医師もいます。 医学部を卒業した時点での国家試験は共通ですが、その後は数え切れないほどたくさんの分野で働いています。

医師国家試験に合格したということは、医師として診療できるということを保証するのではなく、 研修を始める資格が得られたということです。その研修は医師になりたてだけのものではなく、生涯続くものです。 現在の私の医師としての知識と技術は国家試験を通った後に得たものがほとんどです。 医師になって25年が過ぎましたが、今でも、 『ああ、こうだったのか』と患者さんを診察しながら納得することが少なくありません。 臓器移植などいわゆる先端医療に従事する医師にとって、患者さんと向き合って診療すること自体が、 新しいことと出会う連続でしょう。医師は、例え大学教授であっても、いつまでも研修医なのです。

医師に必要とされる知識や技術はその医師が働いている場所で全く異なります。 このような現場の医師に対して、どのような研修や試験を課して免許を更新するのでしょうか? これこそ形式的な更新にしかならないでしょう。国民に対して責任のある医療を提供するためには、 いわゆる生涯教育を続けていくしかありません。 現在は、インターネットなどのメディアを通じて、一人で開業していても、自己研修の機会はたくさんあります。 このような生涯教育を評価して免許更新の条件とするなら分かりますが、試験を課して合格不合格を決めることは非現実的です。

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