医学の進歩は留まるところを知りません。内視鏡検査もそのひとつです。15年前に開業して間もなく、口から入れますが非常に細い内視鏡が出ました。細いだけで苦しさが非常に少ないと言われていましたのですぐに購入しました。平成15年にはこの機種の改良型がでましたので、これに替えました。私自身の内視鏡技術の上手さが苦しくない理由であることはもちろんですが、この細い内視鏡のお陰で、胃内視鏡検査は非常にスムーズに行えるようになりました。この頃は、「こんな検査なら、明日もう一度やってもいいですよ。」という人がたくさんいました。

平成18年には、全く新しい鼻から入れる細い内視鏡が開発されました。これが優れもので、嘔吐反射が少なくなり、胃内視鏡検査は非常に楽になりました。最初の頃は、鼻から入らない人もいましたが、経験例が6,000例を越えた現在は、鼻から入らない人は1ヶ月に1人いるかいないかです。細いだけに胃の中を見る時の解析度はハイビジョンに比べると劣ります。しかし、嘔吐反射が少ないので、胃の中をゆっくり観察することができるようになりました。この結果、内視鏡検査が終わってすぐに、「これくらいなら、今日もう一度やってもいいですよ。」という人がいました。それに、右の鼻から検査をした患者さんが、「今度は左からですか?」というのには笑ってしまいます。

鼻からの内視鏡検査を行うようになって気が楽になったことがあります。それは、空気をたくさん入れて胃を大きく膨らませ、ひだの間を十分に観察できるようになったためです。「未分化型」といわれる小さくても深く進行し、見つかる前に進行してしまう胃癌があります。この癌は胃のひだの間にあることが少なくなく、ゲェーゲェーと反射が強い時は、観察が不十分になって見逃すことがあります。鼻から入れる内視鏡では、空気を十分に入れてゆっくり観察できますので、安心して検査を終えることができます。

今度は、胃や大腸をNBIといわれる画像で観察できるようになりました。NBIというのは光の特性を利用して、血管の細かい状態を見るものです。癌ができると正常とは違う血管が出てきます。私たちが見ている通常の光で見ると多少変化があるかなという微妙な所をNBIで観察すると分かりやすくなるのです。このNBIを使うために、内視鏡の光源といわれる装置を新しくしました。実際に使用する内視鏡自体はこれまでのものが使えます。

NBIを導入した主目的は、食道癌を見つけるためです。最近は、胃癌や大腸癌は、早期のものであれば内視鏡や腹腔鏡で手術ができます。食道癌も早い時期で見つけると同じように処置ができますが、早期の食道癌を見つけるのがむずかしいのです。特殊な色素を使って検査をすると見つけやすいのですが、通常の検査ですべての人に使うのは無理です。そこで、NBIを使って少しでも早期の食道癌を見つけようと思っています。この観察のために、これまでよりも胃内視鏡検査の時間が長くなりました。

医療機器の進歩とともに病気の診断方法と治療方法が変わってきています。新しい医療機器が出るとすぐに変えているのは、「より早期の癌」を診断するためです。胃癌や食道癌も「より早期の癌」であれば、大きな手術をすることなく内視鏡手術で治療を終えることができるためです。胃がん検診の基本的な目的は、胃癌を早く見つけることで死亡する人を少なくすることです。実際は、私たちは『外科手術』をすれば助かる早期癌を見つける努力をしています。これが今では、「より早期の癌」を見つけ、『内視鏡手術』ができる段階で診断することに目標が変わってきています。

現在、内視鏡検査はハイビジョンで観察できるようになっています。このNBI画像は拡大内視鏡で観察するともっと正確な診断ができるのですが、今の細い内視鏡ではまだ開発されていません。近い将来、鼻から入れる細い内視鏡でも拡大した像をハイビジョン画像で観察できるようになります。皆さんは、世界でも医療水準が高く、いつでも医療機関や健診センターを受診できる環境にいます。『早過ぎる死』を迎えないために、がん検診を受けましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です