『コーヒー・ルンバ』、『花の首飾り』、『旅人よ』、『サルビアの花』・・・・・。井上陽水が、昔の流行歌を歌った新作アルバムを出した。「UNITED COVER」という意味の分からないアルバムだ。

私が大学に入学したのが1971年であり、陽水がデビューした頃である。『人生が二度あれば』、『傘がない』、『夢の中へ』を歌っていたデビュー当時は、吉田拓郎、小室等などと並んで一人のフォーク歌手としてしか私は見ていなかった。

「UNITED COVER」の他に、30周年を記念した2枚組35曲入りの「GOLDEN BEST」がお薦め。熱狂的なファンには17枚組の「ReMASTER」というアルバムがある。

どこか厭世的で退廃的な、暗い感じがするそれほど印象に残る歌手ではなかった。私は82年から84年までアメリカに留学していたが、帰国して間もなく、中森明菜という女の子が歌う『飾りじゃないのよ 涙は』という歌がテレビから流れてくるのが気にかかった。そして、これが陽水の曲であることを知った。安全地帯が歌う『恋の予感』も陽水の曲だった。

88年に県立中央病院に転勤になり、精神的に余裕ができた時に大学時代に知った小椋佳を再び聴き始めた。CDを見て回っていた時にたまたま出会ったのが陽水の「9.5カラット」である。このアルバムは私が陽水に対して抱いていたイメージとは非常に違っていた。私と陽水はそれほど年齢差があるわけではないが、学生時代に抱いていたフォーク歌手というイメージから大人の歌手に変わっていた。

初めに書いたように、昨年、「UNITED COVER」というアルバムがリリースされた。私は、カバーというのがどういう意味なのかを知らなかった。調べてみると、他人の持ち歌を歌ったものをカバー曲というらしい。特に、他の人に提供した曲を自分で歌いなおしたものを「セルフカバー」というらしい。そうすると、84年に発売された「9.5カラット」はセルフカバーアルバムということになり、「UNITED COVER」は他の人の歌を集めたカバーアルバムとなる。

他人の曲をカバーするというのは、ある意味で非常に冒険だと思う。オリジナルを知らない若い人が聴くと違和感がないかもしれないが、特にオリジナル曲に思い入れのある人にとっては複雑な心境かもしれない。しかし、「UNITED COVER」で歌われている曲は、オリジナル曲を知っている私にも、まるで陽水のオリジナルのように聞こえてくるから不思議だ。例えば、『愛の首飾り』で、「♪おお~あ~いのしるし~」という部分は陽水独特の響きがあり、とても心地よく耳に入って来る。ザ・タイガースの曲だということを全く感じさせない。『サルビアの花』、『誰よりも君を愛す』などと聴き続けていると、高くてしかもどこか濡れているような甘い声の陽水の世界に引き込まれてしまう。他人の持ち歌を、こうも自分の世界にしてしまうとは、何とすばらしい歌手なんだ、陽水は!!

70年代にはフォークの旗手とされながらも、現実べったりの他のフォーク歌手とは一線を画し、80年代には人気歌手に曲を提供してヒットさせ、90年代には映画の主題歌やCMソングで大ヒットを飛ばす。次の10年では、陽水はどのような世界を見せてくれるのだろうか。

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