ピロリ菌が胃癌の原因であることが分かっています。沢田内科医院ではこれまで約1,500人のピロリ菌除菌治療を行いました。除菌してピロリ菌がいなくなれば胃癌にならないのではありません。事実、除菌した人の中で胃癌になった人はたくさんいます。昨年1年間で、開腹手術をしないで内視鏡治療ができる胃癌が4例見つかりました。今年もすでに4人の人に内視鏡治療ができる胃癌が見つかっています。

これだけを見ても、ピロリ菌の治療をしてもきちんと定期的に内視鏡検査を受けなければならないことが分かります。逆に、内視鏡検査で胃粘膜が正常で、精密検査でピロリ菌がいないと判定した場合には、胃がん検診は3年に1回でよいとしています。3年に1回というのは決まった基準があるのではなく、私自身の経験から3年以内に見つかった胃癌は手術をすれば助かるという個人的な判断です。

ただ、残念なことに、最近、3年目で内視鏡検査を行った人に進行した食道癌が見つかりました。毎年やっていれば、もっと早く見つかったのではないかという思いがあります。非常に稀なことを考えていると、すべての人に負担がかかることになり、胃がん検診の検査としては不適当なことは分かるのですが、臨床医としては残念なことです。

弘前市に対してピロリ菌対策を提案してきました。平成26年には胃がんリスク検診が開始されました。青森県内では弘前市だけの事業です。その後、中学生に対してピロリ菌検査を行う事業を提案してきました。まだ、正式に決まってはいませんが、今年度中に実施される予定です。

弘前市の中学2年生は約1,600人います。これまでの他の地区での結果から、弘前市でも約5%、80人ほどがピロリ菌に感染していると予想されます。この中学生のピロリ菌を除菌することで、将来の胃癌の死亡数を限りなくゼロに近づけるのが目的です。最近の弘前市の胃癌での死亡数は80~90人です。これは死亡数ですので、胃癌を発症する人は少なくともこの2倍はいることになります。

ピロリ菌の事業と関連して、弘前市に対して胃がん検診を内視鏡検査で行うことを提案しています。内視鏡検査と同時にピロリ菌の感染がないかを検査して、胃癌の死亡数を極力少なくするのが目的です。早ければ来年からでも始まるかも知れません。弘前市医師会はいつ始まってもいいように準備しています。