弘前市の胃がん検診は、この8月から内視鏡検査でも出来るようになりました。原則として、胃がん検診はレントゲン検査による検診ですが、全国的には内視鏡検査でも行われています。

弘前市医師会は弘前市と胃がん内視鏡検診の実施について話し合いを進めてきました。内視鏡検査の方が胃がん発見率が高いこと、内視鏡治療ができる胃がんは内視鏡検査の方が発見しやすいこと、放射線被曝の問題、などから胃がん検診をレントゲン検査から内視鏡検査にすることを弘前市に提案してきました。

弘前市では平成26年から胃がんリスク検診を行ってきました。このデータによると、40歳の弘前市民のピロリ菌の感染率は約20%でした。この結果でも確認されましたが、ピロリ菌に感染していない8割の胃がんリスクが非常に低い人たちに放射線を使った胃がん検診を行うことの妥当性が問われています。胃がん検診の対象年齢は40歳以上ですので、毎年、胃がんリスクが低い人たちが対象となって検診を受けることを勧奨されることになります。そこで、医師会としてはレントゲン検査での被曝を抑え、内視鏡検診を行うことを弘前市に提案していたのです。

内視鏡検診にする理由として医療技術の進歩があります。これまでは、胃がんはどんなに小さくても開腹手術が必要でした。しかし、内視鏡の技術が進歩するに従い、小さい胃がんは開腹手術をすることなく内視鏡で処置できるようになったのです。ある協会けんぽ組合によると、胃がんの内視鏡手術と開腹手術は3:2で内視鏡手術が多いとのことでした。弘大消化器血液内科で1年間に行われている内視鏡手術は約100件です。外科手術がどれくらい行われているのかは私は知りませんが、東北大学の先生の話では、胃がんが内視鏡で手術されていることと、胃潰瘍の治療の進歩で手術が少なくなり、全体の胃の開腹手術はかなり少なくなっているとのことでした。

沢田内科医院で、内視鏡手術をお願いしたのは、平成28年が4人、平成29年が6人でした。レントゲン検査では見つからないような胃がんが内視鏡検査で見つかっているのです。国立がん研究センターではがん死亡数の予測を行なっています。それによる胃がんの予測死亡数よりも、実際の胃がん死亡数は少ないのだそうです。その原因としてピロリ菌検査が考えられますが、ピロリ菌の除菌で死亡数が減少する効果が現れるには年数が少なすぎるのだそうで、胃内視鏡検査数が多くなったために、胃がんが早く見つかって死亡数が減少しているのであろうと推測されています。ちなみに、沢田内科医院では、5年前から胃と大腸のバリウムによるレントゲン検査は行っていません。

胃がん内視鏡検診は、8月から行われます。対象は50歳以上の偶数年齢の人です。対象者には弘前市から受診券が送られて行きます。今後、ピロリ菌と関連させた検診に発展させて行く予定です。