胃内視鏡検査は苦しい検査の一つとして、皆さんから恐れられています。 しかし、日本に多い胃癌を早く見つけて治療するためには、必須の検査となっています。 私たちの医院での昨年1年間の胃内視鏡検査件数は1,000件を超えています。 そして、たくさんの胃癌が見つかっています。 中には、外科で開腹手術を受けることなく、内視鏡手術で治る早期胃癌もありました。

内視鏡の太さは次第に細くなり、これまで最も細いもので直径が6.5mmでした。 細くなるに従い、嘔吐反射は少なくなり、楽にはなってきました。

左が2月から使用している最も細い5.2mm、中央がこれまでの6.5mm、右が鉛筆です。

中には、「こんな検査なら、毎日やってもいい」という人もいるくらいです。 しかし、それでも苦しい思いをする人がかなりいます。 幸い、私の医院では、内視鏡検査を拒否する人はほとんどおらず、 バリウムでのレントゲン検査は非常に少なく、ほぼ全員が内視鏡で胃の検査を行っています。

平成18年2月7日から、これまでよりも細い内視鏡での検査を始めました。 写真で分かりますが、鉛筆よりも細いのです。 今回の特徴は、細いことに加え、口からではなく、鼻から内視鏡を入れることです。 口から入れると、喉が刺激されるため、嘔吐反射が起こります。 しかし、鼻から入れると喉を刺激することがありませんので、嘔吐反射が出ることはほとんどなくなりました。

口から物を入れるのは自然なことですが、鼻からは空気しか入りません。 そこに棒を突っ込むわけですから、鼻から内視鏡を入れますと言うと、ほとんどの人はびっくりします。 幸いなことに、最近、テレビで鼻から入れる内視鏡が放送されたようで、 この方法を知っている人がたくさんいました。 鼻から入れることに抵抗を感ずる人もいますが、「話しのタネに、1回やって見ましょうよ」と、 だまして行っています。

これまでの1ヶ月間で、90人位の患者さんに検査を行いました。 実際に体験した患者さんの10人のうち9人は、鼻から検査する方が楽だといいます。 入れる時に、鼻が少し痛いことがありましたので、痛み止めの使い方を少しずつ工夫し改良しています。 嘔吐反射が起こったのは、たった2人だけでした。 それも、瞬間的に「はばげだ」だけで、検査中ずっと吐き気がした人はいませんでした。 鼻の通り道が狭くて、どうしても入らない人が4人いました。 この人たちは、これまでの方法である口から入れて検査を行いました。

これまでの内視鏡検査で反射が強い人には特に好評でした。 非常に嘔吐反射が強く、最後までゲーゲーしていた人も、「これだと、毎日やってもいいでしょう」と聞くと、 「そうですね、でも、毎日はちょっと・・・・」と余裕で応える程度で、ほとんど反射がなく終了できます。 ただ、これまでと違い、喉の麻酔をしませんので、喉を通る時に内視鏡が通るのが分かるようです。 これも、検査後に食事がすぐできるというメリットを考えると、大きな問題とはなりません。

胃内視鏡検査を1年に1回受けていると、見つかるがんはほとんどが早期がんです。 それも、外科で手術をすることなく、内視鏡で治るがんも多数見つかっています。 内視鏡検査が恐ろしい人はバリウムでのX線検査でもかまいません。胃がん検診は毎年受けて下さい。 ついでに、大腸がん検診、女の人は、乳がんと子宮がんの検診も受けて下さい。 これらは、早く見つかると治るがんですから。

蛇足ですが、私の医院での内視鏡検査は苦しくないと噂が立っていますが、これには言葉のトリックがあります。 「年を取ると、だんだん反射が弱くなって、正月にはモチを喉に詰まらせて亡くなるお年寄りが多いですよね。 それに比べて、若い人は、反射が強くて大変なんですよ」、と話しますので、 反射が強くて苦しくても、「自分はまだ若いんだ・・・・」、とだまされて、 苦しい検査のことは忘れてしまうのです。

それから、胃内視鏡検査の時には、胃の動きを止めるために筋肉注射を行っていましたが、 飲み薬で胃の動きを止めることができるようになりました。 ですから、今はあの痛い筋肉注射はしていません。