卒業式当日に行われた卒業祝賀会でのスナップです。卒業式の和服から洋服に変装した卒業生は教室での顔とは違い誰だか分からなくなります。「まるで親子ですね」と看護学校の先生に言われました。

弘前市医師会看護専門学校は、准看護師の資格を持つ学生が、働きながら看護師を目指して勉強するところです。 通常のフルタイムの看護専門学校であれば2年で卒業ですが、午後6時から9時まで講義が2コマの夜間定時制で3年間で卒業します。

普通に仕事をしていれば5時で1日は終わりですが、看護学生は5時になると「お先に失礼しま~す」と学校へ出かけます。 そして3時間の勉強を終えて家に帰り着くのが夜10時です。これを3年間続けるのですから立派なものです。

3月2日、福井絵梨果(私はエリカと呼ぶが、友達からはえーかとも呼ばれている)さんが3年間勉強してきた弘前市医師会看護専門学校を卒業しました。 2月17日には看護師国家試験も終わり、余裕を持って3月25日の合格発表を待つだけです。

国家試験を間近に控えたある日、エリカは私の外来診察の介助をしていた。クラスの仲間は勉強に専念している人も多いらしい。 エリカに、「どうだ、みんなは勉強してるよ。勉強したい気がしないか?」と言った。

エリカは、「先生、勉強したくてウズウズするってこんな気持ちなんですか?」と。2月17日の国家試験に向かって、あんなに飲むアルコールを断って勉強しているエリカ。 自分は仕事で忙しいのに、友だちは国家試験の勉強に専念している。こんな状況でエリカは人生で初めて「勉強したくてウズウズする」という感覚を味わっていたらしい。

子どもには余計な苦労をさせないで育てたいと思うのが親の気持ちです。苦労して育ったから立派な人になるわけでもない。 幸いなことにエリカは受験勉強という厳しい経験をしないでこれまで育ってきたことは間違いない。ハードルの選手だったエリカはこれまで体育会系のノリで受験を乗り切ってきた。 高校はスポーツ科に推薦、医師会准看へも高校からの推薦で合格。准看護学科から現在の看護学科へも推薦で進んでいる。

私は「エリカ、ウズウズする気持ちが初めて分かったか。2月18日からは勉強する時間がたっぷりあるぞ」と言うと、エリカは「先生、期間限定です!!」と。 とにかく、何か厳しい試験を通り抜けるという経験は非常に大事です。こうして「勉強したくてウズウズする」気持ちを味わったエリカには何事にも代えがたい体験だったことでしょう。 看護師免許をもらうことよりも大切なことだったのかも知れない。

断っておくが、エリカは勉強でなく体で進学してきた、と言ってるのではない。准看護学科から看護学科へは、それなりの成績でないと推薦してもらえない。 私は弘前市医師会理事で看護専門学校を担当し、「学務主任」というちゃんとした肩書きもあるので、エリカの成績は知る立場にある。勉強したことがないとはいうが、優秀な成績であることは私が証明します。

沢田内科医院で3年間働きながら勉強し、4月からは弘前脳卒中リハビリテーションセンターで働きます。 ちょっとおっちょこちょいなエリカですが、自分の立場や役割をきちんと理解して仕事や私生活を楽しむことができる女性です。これからも何か熱中できることを捜しながら看護師として活躍することを期待しています。