購入した半自動除細動器

食事や生活様式の欧米化にともない、日本でも心筋梗塞の患者さんが増えてきました。私の医院でも、6月には2人の心筋梗塞の患者さんを治療のために弘大第2内科にお願いしました。心筋梗塞を起こして突然死亡するのは、心室細動のためです。心臓が不規則に小刻みに震えているため、血液を送り出すことができない状態です。

この時期に電気ショックをかけると、元のように心臓のポンプの働きを取り戻す可能性があります。テレビのERでよく見かけるシーンです。この時期(5分程度か?)を過ぎると、心室細動から静止期となり、心臓の動きが止まっていますので、電気ショックを与えても心臓は動き始めることはありません。

さて、医院の中で心臓発作を起こしても、除細動器がないと、心臓マッサージをしたまま除細動器を積んでいる救急車が到着するのを待つか、救急病院へ運んで行くしかありません。それでは助かる人も手遅れになる可能性が大きくなります。そこで、当医院では除細動器を購入しました。この除細動器は「半自動」です。つまり、心室細動であるかどうかを除細動器が判断して、心室細動であれば術者に命令します。そして、術者がスイッチを押すと除細動が行われます。この操作は、私がその場にいなくても、看護婦が除細動器を取り付けて行うことができるのです。

重い体重をかけて心臓マッサージの実習をしているのが、桑田まり子。患者さん役は、たまたま医院に来ていた弘大医学部6年の本田哲史君。心配そうに見守るのが、菊池千枝と小田桐婦長。

私は循環器の専門医ではありませんので、除細動は救急処置であり、この後は弘大第2内科で治療をお願いすることになります。開業以来7年が経過しましたが、除細動を行う場面には遭遇していません。これからもこの器械を使わないことが患者さんには幸せなことですが、何年かに1人でも除細動が必要になるかもしれません。

医院で使用する薬、特に注射薬は1箱で5本、10本単位で購入しなければならないことが多く、有効期限内に使い切ることがなく、期限切れで無駄になってしまう薬が少なくありません。しかし、無駄になるからといって準備して置かないわけには行きません。このように、医療には結果的に無駄になることが分かっていながら準備して置かなければならないことがたくさんあります。この高価な除細動器も結果的に無駄な器械となる可能性が高いのですが、無駄になることが患者さんの幸せとなります。

除細動器があると、心筋梗塞の患者さんが来ても、「心室細動を起こしても何とかなる」と”私の心臓”の負担を軽くしてくれますので、無駄にはならないですね!!