厚生労働省では3年ごとに医療機関を受診する患者さんの数や病気の種類などを調べています。これは「患者調査」といわれ、ある1日の医療機関への受診状況を調べるものです。そして、この数値を衛生行政に反映させようとするものです。平成24年11月に公表されたデータを見ると、これまで言われていたことですが、入院患者数が減り外来と在宅患者数が増えていることが確認されました。

日本全体で、入院患者数は134万人です。青森県の人口は135万人ですから、今日現在、青森県の人たちが全員入院しているということです。すごい数ですね。3年前よりも5万人減少していて、65歳以上の人が7割を占めています。外来通院患者数は726万人です。3年前は680万人でしたので46万人増えています。特に65歳以上の人たちが8%増加し333万人とのことでした。年を取るごとに病気になるのは当たり前ですので当然の数値です。

平成23年度の国民医療費は38兆円と発表されています。入院と外来の医療費がほぼ半分ずつですが、外来患者数と入院患者数は726万人と134万人ですので、一人当たりでは入院患者に必要な医療費は外来の6倍ということです。入院患者数が5万人減っているのは、入院が必要な人が少なくなっているのではありません。医療費を抑制するためにベッド数を減らしているために、入院患者数が減っているのです。

在宅で医療を受けている人は11万人です。3年前は7万人と言われていましたので4万人の増加です。入院ベッド数が減らされているわけですから当然のことです。在宅医療は住み慣れた自宅で家族とともに過ごすことができる理想的な状態だと言われていますが、本当にそうでしょうか。もちろん自宅で過ごせることは理想です。しかし、それには家族に介護力、看護力があるということが前提です。

通院している患者さんの中には一人暮らしの人たちがたくさんいます。老夫婦だけで暮らしている人たちもたくさんいます。介護力がない状況では、訪問看護や介護を利用したとしても在宅で世話をすることは簡単なことではありません。在宅医療が理想とは言いますが、入院できる病院を探して相談に訪れる人はたくさんいます。これが現実です。

60歳を過ぎた団塊の世代が亡くなる時期には、今よりも多くのベッドが必要になることは明らかです。しかし、今の制度では、新しく開業する場合にはベッドがある医院を開業することはできません。在宅医療が進められていますが、前にも述べましたが家庭には介護力がありません。これからの老人はどこで亡くなるのでしょうか?

病気別にみると、高血圧症907万人、糖尿病270万人、がん153万人、脳卒中123万人でした。脳卒中以外はすべて多くなっています。沢田内科医院で2年前に通院していた患者数を調べたことがあります。月に約2,000人が通院していますが、高血圧症1,200人、糖尿病470人でした。両方の病気を持っている人がたくさんいますし、その後も増えていますので、もっと多くの人たちが通院していると思います。いずれにしろ、心筋梗塞や脳梗塞を発症する可能性がある病気が多くを占めていることが分かります。

この文章を書いている時点で、確認のために薬剤費がどれくらいなのかを調べてみました。新聞では薬をジェネリックにすることで薬剤費をかなり減らすことができると書いています。しかし、薬剤費そのものの統計がほとんどありません。病院では入院費に含まれていたり、薬局の調剤費と区別ができないなど、薬剤費そのものがどれくらいかかっているのかが分からないのです。医療費の25%程度と言われていますが、はっきりした額が分からないのでは、政策に説得力がありません。

沢田内科医院は、高血圧症、糖尿病、高脂血症といったメタボ関連の病気とがんの早期診断を診療の柱にしています。今回はがんに関しては書きませんでしたが、「患者調査」の結果を見ると、開業医としての方向性は間違っていないと確認できました。