糖尿病患者さんは日本全体で約700万人いると推定されています。糖尿病は治療しないで放置しておくと、いろいろな合併症を起こしてきます。例えば、糖尿病のために腎臓が悪くなり、透析しなければならなくなる糖尿病患者さんは年に11,000人います。網膜症のために失明する患者さんは年に4,000人もいます。また、糖尿病は血管が悪くなって動脈硬化を起こしますので、心筋梗塞や脳梗塞になりやすいのが特徴です。そして、糖尿病はきちんと治療していれば、これらの合併症をかなりの程度まで防ぐことができる病気なのです。

新しい検査機器が増えて、またまた仕事が増えた沢田正人です。

私たちの医院では、これまで血糖値と尿糖は診察した時点で結果が分かるようにしていました。ところが、ここ1、2ヶ月の平均した血糖値を表すグリコヘモグロビン(HbA1c)は院内で測定できませんでしたので、次の診察の時に結果をお知らせしていました。ということは、グリコヘモグロビンは、2週間前や1ヶ月前の数値ということになり、診察した時点での状態を表しているものではありません。ですから、このグリコヘモグロビンの値が同時に分かると、その時の糖尿病の状態をさらに詳しく評価することが出来ます。グリコヘモグロビンは、糖尿病の治療効果を判定するには血糖値や尿糖よりも、もっと重要な検査だと私は思っています。

ところが、これを測定する器械は高価なもので、開業医院でこれを持っているところはほとんどありません。この器械は高級な乗用車1台と同じくらいの値段であり、開業医院では採算が取れないのです。とは言うものの、糖尿病患者さんは年々増えてきています。糖尿病診療を質的に充実させるためには、値段を考えている場合ではないと判断し、この度、グリコヘモグロビンの測定器械を購入しました。これを整備したことで、診察した時点での血糖、尿糖、グリコヘモグロビンがリアルタイムで分かりますので、糖尿病の状況をしっかり把握することができるようになりました。また、糖尿病が疑われて初めて受診した場合も、その日に治療方針を決めることができます。

糖尿病で入院する患者さんも多くなりましたので、病棟にはルームランナーとエアロバイクを揃えています。私たちの医院は狭いので、冬の間は運動療法を行うことが困難でした。しかし、談話室で運動ができるようになりましたので、この問題も解決しました。本格的な眼底カメラも備えて、年に1回は網膜の検査をしています。この眼底カメラで網膜症が発見された糖尿病患者さんもたくさんいます。もちろん、少しでも異常が疑われると眼科に紹介して診察をお願いしています。

糖尿病の治療で使うインスリンの種類も多くなり、飲み薬の種類も増えてきました。婦長が『糖尿病療養指導士』の資格取得のために勉強していることを前のニュースレターでお知らせしました。器械類のハード面だけでなく、それを使いこなすソフト面でも私たちの医院の糖尿病診療のレベルはアップしてきています。今後も、質のよい医療を提供していきたいと努力していますので、ご期待下さい。