新型インフルエンザで非常に忙しい冬でした。例年、11月にはインフルエンザワクチンの接種が始まり忙しくなります。今年は、10月から新型インフルエンザの流行があり、1月からは新型インフルエンザワクチンの接種が始まりました。毎日、ワクチンワクチンの日々でした。季節性インフルエンザワクチンを接種した人は、例年とほぼ同じで1,100人でした。これに対して新型インフルエンザワクチンは、1,500人ほどが接種しましたので、それだけ新型インフルエンザに敏感になっていたことを物語っています。

新型インフルエンザ流行で、弘前市の救急体制が混乱することが予想されました。他の地域での状況から、弘前市でも土曜日や休日に急患診療所と輪番病院へ多数のインフルエンザ患者が受診する可能性がありました。これに対して、弘前市医師会は、5月から特別委員会を設けて対策を立ててきました。それに基づいて、患者数が増加した10月31日から1月3日までの土曜日、日曜日、祝日、延べ25日間、38の医療機関が参加して時間外診療を行いました。

この時間外診療体制を実施した結果、急患診療所と輪番病院では大きな混乱もなく新型インフルエンザ流行を乗り越えることができました。何事もやりっ放しはいけませんし、新聞社などのマスメディアを初め、いろいろな人たちにご協力をお願いしました。その方々への報告を兼ねて、医師会で行った時間外診療の状況をまとめてみました。

医師会だけの数値ではなく、時間外診療の状況を相対的に評価するために、市内の7つの病院への時間外受診患者数を調べてみました。
医師会時間外診療分を含め、延べ25日間の弘前市内の総受診者数は10,166人でした。医師会時間外診療が25%、急患診療所が28%であり、約半分が医師会でカバーしたことになります。健生病院に24%、国立病院機構弘前病院9%、弘前市立病院8%、他の4病院に5%の患者が受診しました。健生病院ERは24時間体制であり、急患診療所と医師会時間外診療の患者数と同じくらい受診しており、今回のインフルエンザ診療で大きな役割を果たしていたことが分かりました。

市内全体で受診数が最も多かったのは11月23日の866人でした。急患診療所に246人、健生病院に199人受診していました。この日は、医師会時間外診療に293人受診しており、医師会が時間外診療を行っていなければ急患診療所と健生病院はパニック状態になっていたと予想されます。

今回の新型インフルエンザは、感染性が強くなく、通常の感染対策で診療を行うことができました。しかし、強毒性の鳥インフルエンザが流行した場合に同じような対策でいいのかなど、検討すべき課題があります。いずれにせよ、最前線で感染症と戦うのは私たち第一線の臨床医ですので、今回の結果を参考にして取り組みたいと思います。