弘前高校では、さまざまな分野で活躍する先輩を招いて毎年講演会を行っています。 私が高校時代には、エベレストをスキーで滑った直後の三浦雄一郎が、1時間半もの間、ずっと立ったままほとんど動かずに講演したことを記憶しています。 11月号の月刊「現代」を見ますと、三浦雄一郎、鎌田慧、長部日出雄らが平成になってから講演に来ているようです。 今年は、私の同期で、NHKの解説委員をしているジャーナリスト、山内聡彦(やまうちとしひこ)さんが講演に来ました。

山内さんは、弘前高校を卒業した後、東京外国語大学ロシア語学科に進学し、NHKに入社しました。 ちなみに、朝陽小学校、四中の卒業生です。当時のロシアは、もちろんベルリンの壁が壊される前でしたので、私には何となく不気味な存在でした。 彼は、人がやらないことをやろうということで、ロシア語を選んだそうです。 NHKにはもちろんロシアを担当するのを目的で入社しましたので、外信部、今の国際部に所属しました。 そして、ブレジネフ時代の1982年から一貫してロシアを担当し、90年にはモスクワ特派員、ウラジオストック支局長、98年にはモスクワ支局長として活躍しました。 当然のこととして、この時期には、モスクワから頻繁にテレビに出ていました。

前のニュースレターで書きましたが、野依教授の言う、「幸運は、用意する心のみに宿る」がここでも真実でした。 つまり、ここが幸運だったのですが、ベルリンの壁の崩壊、ゴルバチョフのペレストロイカ、ソ連の崩壊、エリツィン大統領、そして、プーチン大統領の誕生とその後のプーチン政治という、世界でも類を見ない激動の時代の真っ只中で、ジャーナリストとして活躍できたのです。 日本のジャーナリストとしては異例の2回にわたるプーチン大統領とのインタビューにも成功しています。

彼は、帰国後、NHKスペシャル「ドキュメント・ロシア」(プーチン 権力への階段、苦渋の決断)を制作しました。 その資料を基にして、「ドキュメント プーチンのロシア」(NHK出版)を世に出しました。 私たちは、2,30ページの医学論文を書くのにたくさんの参考論文を読みます。 それから考えると、考えられない位の膨大な資料を駆使して書いたことでしょう。 日本では考えられないくらい短時間のうちに大統領に上り詰めたプーチン大統領のことが、自分の意見を入れずに事実を積み重ねていく手法で書かれているこの本は圧巻です。 本の題名が示すように、ドキュメンタリータッチで書かれたこの本は、非常に入り組んだ内容で、すべてを理解しながら読むことなどできませんが、つい引き込まれてしまいます。

10月7日の弘前高校での講演会の前夜、私たち昭和46年卒の同期生が歓迎会を開きました。 正式には、弘前高校の歓迎会だったのですが、私たちが乗っ取った形になってしまいました。 写真はその時に、ちょっとアルコールが入った時点でのものです。 深夜1時まで付き合ってくれましたが、次の日はちゃんと講演したそうです。 それも2時間。写真の左端が似顔絵のモデルの私、真ん中が山内さん、その横が黒石病院外科の八木橋信夫さん、後ろが弘前市健康推進課の鈴木道夫さんです。

山内さんは、ロシア、アフガニスタンなどその周辺諸国のニュース解説に時々NHKに出ています。 顔は、ビジネス用ですので、この写真とはちょっと違いますが、ニュース解説の時などに、注意して見て下さい。 このようなジャーナリストが同期生から出ていることを誇りに思います。